いつかどこかで6
ヨーロッパの東の方だと思います。
まだ小さな子供だった私と黒い髪のその少年は
小さな国の後を継ぐ、1歳違いか双子の兄妹でした。
ある日、隣の国から攻め込まれ
彼は囚われ、処刑されることになりました。
物陰から悲しみに震えて見守る私に
「逃げろ、逃げて平和に暮らしてくれ」
彼の黒い瞳が強く訴えかけました。
… … … … …
兄の遺志を守り、私はどこか田舎の村で
身元を隠して暮らしたようです。
中年の小太りで穏やかな女性になっていました。
近所の貧しい子供たちに文字や、歴史、計算などを教えながら
彼らの陽気で純粋なエネルギーを楽しんでいるようでした。
その中にひとり、特別な目の輝きをした少年がいました。
「知恵や創意工夫、そして愛と誠意があれば
争ったり奪い合ったりしないで
お互いに平和に暮らすことができる。
あなたたちは戦争をしなくても、生きていけるのよ。」
静かな情熱を秘め、私の言葉にじっと聞き入る少年。
私が伝えたいことを一番理解していました。
「この子は死んだ兄の生まれ変わりだわ。」
彼は十代半ばで広い世界を求めて村を出ていき
私はそれから暫くして、彼と再会することなく一生を終えました。
次回に続く
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